教室で使えるかもしれないもの作り

「先生が司会をしなくていい」ふりがなつきで1台からできる人狼ゲームアプリ「人狼ゲーム」

人狼ゲーム を開く コードを見る

🏫 はじめに

「話し合いの学習」と聞くと、少し身構えてしまうことはありませんか。テーマを決めて、グループを分けて、司会を立てて、時間を計る。準備にそれなりの手間がかかるわりに、いざ始めてみると数人だけが話していて、あとの子はじっと座っているだけ。そんな時間になってしまうことがあります。

雨の日の昼休みや、行事のあとにぽっかり空いた15分も似ています。何か全員でできることをやりたいのに、道具を出して、ルールを説明して、というところで時間が尽きてしまう。結局いつもの自習になってしまった、という日があるのではないでしょうか。

今回作ったのは、タブレットを1台だけ用意すれば始められる人狼ゲームのアプリです。ブラウザで開いて、遊ぶ人数を選んで、ボタンをひとつ押すだけで始まります。名前は入れなくてもかまいません。進行のアナウンスはアプリが自動で読み上げるので、先生が司会をする必要もありません。

https://werewolf.giga-school.com/

人狼ゲームは、村人にまぎれこんだ人狼を、話し合いと投票で見つけだすゲームです。誰が人狼か分からないので、みんな話すしかありません。話す理由が最初から用意されている、というのがこのゲームのいちばんの強みだと思っています。

遊べるのは4人から12人まで、1ゲームはだいたい10分から20分です。漢字にはすべてふりがなが付いているので、中学年くらいから読めるはずです。

以前この連載で計算のドリルアプリを紹介しましたが、今回は勉強のアプリではありません。学級の時間や、雨の日の教室で使えるものを作りたくて手を動かしました。

ホーム画面
最初の画面。遊ぶ人数と役職と名前が、上から順にひとつの画面にならんでいます。

📱 このアプリでできること

準備は、ブラウザで上のページを開くところから始まります。開いた画面には「遊ぶ人数を選んでね」と大きく出ていて、4人から12人までのボタンがならんでいます。押した人数に合わせて、村人や人狼といった役職の内訳が自動で決まります。

名前を入れる欄には、はじめから「プレイヤー1」「プレイヤー2」と入っています。時間がないときは、ここを触らずにそのまま「ゲーム開始」を押して構いません。名簿の名前をそのまま入れてもいいですし、班の番号でも動きます。ここで止まってほしくなかったので、空欄のままでも先に進める作りにしました。

ひとりに1台ずつ配る形にはしませんでした。人数ぶんの端末をそろえて、全員をつないで、はぐれた子を待って、というところで、遊ぶ前に時間が溶けてしまうからです。1台を手渡しでまわす形なら、用意するものはタブレット1台と机のまわりのスペースだけで足ります。それに、渡すときにどうしても相手の顔を見ることになります。画面ごしに疑い合うより、そのほうが人狼らしいと思いました。

あそびかた
画面の右上にある「?」を押すと、遊びかたが5つの場面に分けて出てきます。子どもだけで読んで始められる書きかたにしてあります。

ゲームが始まると、まず役職の確認です。「ゆうとさんの番です」と大きく名前が出るので、その子がタブレットを受け取って、自分の役職をこっそり見ます。見終わったら「確認しました」を押して、次の人に渡します。この受け渡しがそのまま、始まりの儀式のようになります。

役職の確認
順番が来た人の名前が大きく出ます。ほかの人は見ないでね、という声かけも画面に入っています。
村人の役職カード
村人のカード。役職の名前と、その役職ができることが、ふりがなつきで書かれています。
人狼の役職カード
人狼には、仲間の人狼が誰なのかも表示されます。ここを読んだ瞬間の顔が、このゲームのいちばん面白いところだと思っています。

全員が確認し終えると、昼の話し合いになります。ここで先生がすることは、ほとんどありません。画面に「相談する時間を決めてね」と出るので、1分か3分か5分を選ぶだけです。あとはアプリが大きな数字でカウントダウンし、残り5秒から音で知らせ、時間が来たら「時間切れです。投票へ進んでください」と読み上げます。

1日目の昼
昼の画面。生きている人の一覧が出ているので、誰の話をしているのか分からなくなりません。
相談タイマー
数字を思いきり大きくしました。残り時間が見えていると、話がだらだら伸びません。

話し合いが終わったら投票です。ひとりずつタブレットを受け取って、追放したい人のボタンを押します。集計はアプリがやってくれるので、黒板に「正」の字を書く必要はありません。

投票
投票する人の名前が上に出ます。自分には投票できないようになっています。
投票結果
誰が何票入れられたかが一覧で出て、そのあとに追放された人が発表されます。

同じ票数で並んだときは、自動で決選投票になります。決選投票では、候補になった2人は投票できません。それでもまた並んだときは、くじ引きで決まります。教室でいちばんもめるところなので、迷いが出ないように全部アプリの側で決めるようにしました。

決選投票
同数のときの決選投票。候補になった人だけがボタンとして出ます。

🎭 6つの役職と、夜に起こること

このアプリには、村人、人狼、占い師、霊能者、狩人、狂人の6つの役職があります。人数を選ぶと内訳は自動で決まりますが、「役職のカスタマイズ」で自由に増やしたり減らしたりできます。

役職のカスタマイズ
6人で、6つの役職をひとつずつにしたところ。人狼の数が多すぎるときは、始めるボタンが押せなくなります。

はじめての学級では、自動で決まった内訳のまま1回遊んでみるのがおすすめです。慣れてきたら、狩人や狂人を足すと話し合いの手ざわりが変わります。

占い師の役職カード
占い師は毎晩ひとりを占って、その人が人狼かどうかを知ることができます。
狩人の役職カード
狩人は毎晩ひとりを人狼の襲撃から守ります。同じ人を2晩続けて守ることはできません。
霊能者の役職カード
霊能者は、昼に追放された人が人狼だったかどうかを知ることができます。
狂人の役職カード
狂人は人狼の味方です。占われても人狼ではないと出るので、うそをついて村をまどわせます。

夜になると、また順番にタブレットを回します。自分の番が来た人だけが画面を見て、行動を選びます。

夜の順番
夜も、ひとりずつ受け取って画面を見ます。ほかの人は目を閉じているところです。
人狼の襲撃
人狼は襲撃する人を選びます。人狼が2人以上いるときは、先に見た仲間が誰を選んだかが画面に出ます。同じ人にそろえてもいいですし、変えても構いません。あとから見た人が選んだ人が、その夜の襲撃先になります。
占い師が占う人を選ぶ
占い師は、占いたい人を選びます。
占いの結果
結果はその場で出ます。この画面を見た子が、次の日の昼にどう振る舞うか。そこがこのゲームの山場です。
狩人が守る人を選ぶ
狩人が守る人を選ぶ画面。前の晩に守った人はボタンに出てきません。
霊能者の結果
霊能者には、昼に追放された人の正体が伝えられます。

特別な力を持たない村人の番も飛ばしません。「あなたの夜の行動はありません」と出て、OKを押して次の人に渡します。ここを飛ばしてしまうと、渡す順番から役職が分かってしまうからです。

夜が明けた朝
全員の行動が終わると、夜が明けます。
誰も襲撃されなかった朝
狩人が守りきった朝。誰も襲撃されなかったことだけが伝えられ、誰が守ったかは分かりません。
ゲーム終了
決着がつくと、全員の役職が公開されます。追放された人や襲撃された人には、ドクロと取り消し線が付きます。色だけで生き死にを表すと、色の見えかたに特性のある子に伝わらないので、印と線と読み上げの3つで示すようにしました。

🖥️ 電子黒板と、音を出せない教室のために

画面の上には小さなボタンがならんでいます。どれも、教室で実際に困りそうなことに合わせて付けたものです。

いちばん左のスピーカーのボタンで、読み上げと効果音を止められます。隣の学級に声が聞こえてしまうときや、図書室で遊ぶときに使ってください。音が消えても進行に支障はありません。画面の文字だけで最後まで遊べます。

その隣のいなずまのボタンは、背景の動きを減らします。このアプリは昼になると青空、夜になると星空へと背景が変わりますが、画面の動きが苦手な子にはそれがつらいことがあります。1回押しておけば、次に開いたときも覚えています。

右側にある広がる矢印のボタンは、電子黒板に映すときのものです。押すと文字とボタンがひとまわり大きくなり、後ろの席からも読めるようになります。

提示モード
電子黒板に映したときの見えかた。相談タイマーは学級全体で共有したい情報なので、いちばん大きく出るようにしました。

このボタンには、ひとつだけ制限を付けました。役職の確認中と夜の行動中には出てきません。文字が大きいと隣の席から役職が見えてしまい、ゲームそのものが成り立たなくなるからです。押せなくしたのではなく、その2つの画面ではボタン自体を消しています。

✨ 導入のメリット

三つのいいことが期待できます。

一つ目は、先生が進行から解放されることです。順番の指示も、時間の計測も、票の集計も、同数のときの決選投票も、全部アプリの側でやります。先生は教室の後ろから、子どもたちが話しているのを見ていられます。話し合いの学習でいちばん見たいのは子どもの様子のはずなのに、司会をしているとそこが見られません。その時間を返せるものにしたいと思って作りました。

二つ目は、全員に話す理由が生まれることです。人狼ゲームでは、黙っていると疑われます。ふだん発言しない子にも「わたしは村人です」と言う必要が出てきますし、「なんでそう思ったの」と聞かれれば理由を答えることになります。話す練習をしましょうと言われて話すのは難しいですが、ゲームの中でなら自然に口が動くのではないかと思っています。

三つ目は、準備がいらないことです。用意するのはタブレット1台だけ。プリントの印刷も、カードの用意も、名簿の登録もありません。ログインもないので、パスワードを忘れた子を待つ時間も発生しません。5時間目が10分早く終わったから、というくらいの思いつきで始められます。続けられるかどうかは、結局この手軽さで決まると思っています。

🛠️ 【管理者向け】導入手順

情報担当の先生に聞かれそうなことを、先にまとめておきます。

このアプリはサーバーを持っていません。子どもが入力した名前は、その端末の画面の中にあるだけで、どこにも送られません。ゲームを終えるか画面を閉じると消えます。端末に残るのは「音を消しているか」「動きを減らしているか」の2つの設定だけです。成績も正誤も記録していません。名簿の名前をそのまま入れて使っていただけます。

校内フィルタリングで許可が必要なのは、次のひとつだけです。

外部のサービスは一切使っていません。文字の書体もアプリの中に入れてあるので、ほかのサイトへ通信することがありません。通信が発生するのは、最初にページを読み込むときだけです。配信されるファイルの大きさは全部あわせて約548キロバイトで、スマートフォンで撮る写真1枚よりも小さいくらいです。校内の通信が混む時間帯でも重くなりにくいはずです。

端末に入れておくと、ブラウザの枠が消えて全画面になり、インターネットにつながっていなくても遊べるようになります。おすすめの手順は次のとおりです。

iPad では、ホーム画面への追加を強くおすすめします。Safari には7日間使わなかったサイトの保存データを消すしくみがあり、追加していないと音の設定などが消えてしまうことがあるためです。

共用端末で使うときに知っておいてほしいことが、ふたつあります。

ひとつは、ゲームの進み具合を保存していないことです。途中でタブを閉じたり別のアプリに切り替えたりすると、最初からになります。これは不具合ではなく、意図してそうしています。誰がどの役職だったかを端末に残したくなかったからです。同じ端末を次の時間に別の学級が使うことを考えると、消えてくれたほうが安全です。

もうひとつは、Chromebook のメモリです。4ギガバイトの機種では、タブをたくさん開いているとゲームのタブが自動的に閉じられることがあります。遊んでいるあいだは他のタブを開かないようにしてください。

音についても先に伝えておきます。iPad では、画面のどこかを一度タップするまで音が出ません。これは Safari のきまりで故障ではありません。「ゲーム開始」を押した時点で鳴るようになります。読み上げの声は端末に入っているものを使うので、まれに日本語の声が入っていない端末では読み上げだけ出ないことがあります。その場合も進行には支障ありません。

ルールを紙で配りたいときは、「あそびかた」の画面を開いた状態でブラウザの印刷を押してください。背景と操作ボタンが消えて、白地に黒字でA4たて1枚に出るようにしてあります。印刷の前にプレビューで確認していただけると安心です。

先生向けの手引きは、次のページにもう少し詳しく置いてあります。

https://github.com/GIGAyama/Werewolf/blob/main/MANUAL.md

📖 【利用者向け】使い方のガイド

子どもたちに渡す前に、先生が一度通してみるのがおすすめです。いちばん少ない4人にしておくと、ひととおりの流れを短い時間で確かめられます。

  1. ブラウザで https://werewolf.giga-school.com/ を開きます。
  2. 「遊ぶ人数を選んでね」から、遊ぶ人数を押します。
  3. 名前を入れます。そのままでも遊べるので、時間がないときは飛ばして構いません。
  4. 画面を下までスクロールして、「ゲーム開始」を押します。
  5. 役職の確認です。名前が出た人がタブレットを受け取り、「あなたの役職を見る」を押して自分の役職を見ます。見終わったら「確認しました」を押して、次の人に渡します。
  6. 全員が見終わると昼になります。「相談する時間を決めてね」から1分、3分、5分のどれかを押すと、話し合いが始まります。
  7. 時間が来たら「投票へ進む」を押します。ひとりずつ受け取って、追放したい人を選びます。
  8. 投票結果が出たら、「夜の行動へ進む」を押します。
  9. 夜です。また順番に受け取って、人狼は襲撃する人を、占い師は占う人を選びます。特別な力がない人はOKを押すだけです。
  10. 全員が終わると「昼を迎える」が出ます。押すと朝になり、昨夜のできごとが伝えられます。
  11. 人狼が全員いなくなるか、人狼の数が人間の数と同じになるまで、6から10をくり返します。
  12. 決着がつくと全員の役職が公開されます。「もう一度遊ぶ」で最初の画面に戻ります。

始める前に、子どもたちと約束しておきたいことが3つあります。

3つ目がいちばん大事だと思っています。人狼ゲームは、うそをつくことがルールに組みこまれた、めずらしいゲームです。だからこそ、始める前に「これはゲームの中の話」と全員で確認しておく時間をとってください。追放された子が手持ちぶさたにならないよう、「見ている人は口を出さずに観察する係」という役割を渡しておくのも効きそうです。

📝 まとめ

このアプリを作りながらずっと考えていたのは、先生がタブレットの操作に追われずにすむにはどうしたらいいか、ということでした。

順番を指示するのも、時間を計るのも、票を数えるのも、機械のほうが得意です。それを機械に渡してしまえば、先生の手は空きます。空いた手で何をするかというと、たぶん、子どもたちの顔を見ることです。ふだん発言しない子が、疑われて必死に言い訳しているところ。仲のいい子どうしが疑い合って、笑いながら困っているところ。そういう場面は、司会をしていると見のがしてしまいます。

ICTを使うのは、効率よく進めるためだけではないと思っています。手が空いたぶんだけ、子どもと向き合う時間が増える。そのために使えるものであってほしいと思って作りました。

うまくいくかどうかは、正直なところ、やってみないと分かりません。学級の雰囲気にもよるでしょうし、疑われるのがつらくて合わない子もいるはずです。人数を4人まで下げられるようにしてあるので、まずは先生が入って少人数でやってみせるところから試していただけたらと思います。

このアプリは無料で、広告も出しません。誰でもそのまま使えますし、うまく動かないところや「こうしてほしい」があれば教えてください。手直しできるところは直します。作ったものが誰かの教室で1回でも動いたなら、それでじゅうぶん報われます。

一歩踏み出そうとする先生を、私はいつでも全力で応援しています。

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